支援事例事業継承

経営者の高齢化や後継者難など、中小・小規模事業者は減少の一途であり、地域コミュニティ維持の観点からも喫緊の課題となっております。本シンポジウムでは、地域と企業の持続的発展の視点で考え、事業承継を地域全体で支える構想を探りました。

愛媛県商工会連合会支援担当 | 経営支援課

事業承継シンポジウム

【日時】 令和2年1月28日(火)13時30分~16時30分
【場所】 ANAクラウンプラザホテル松山「サファイアルーム」

~基調講演~
〇演題 「徳川家康に学ぶ事業承継の最強モデル」
〇講師 岡田 晃[経済評論家]
〇要旨
▼事業承継の現況について
・日本政策金融公庫の調査によると、自分の代で廃業すると答えた事業者が50%を占め、他機関の調査では、事業承継が計画的に進まず、中小企業の約半数は準備不足を感じている。
・後継者育成期間は、統計データのみならず、一般的にも5年から10年は必要だとされており、事
業承継は喫緊の課題である。

▼歴史から学ぶ事業承継の意義について
・今の出来事をどう理解し、どう対処すればいいのかのヒントが歴史に詰まっている。
・複雑で分かりにくい時事問題も歴史と結び付ければ考えやすくなり、何かが起きた時、昔の人の
対応を学べば現代にも応用できる。

▼徳川家康の後継者対策について
・江戸幕府は関ケ原の合戦後約260年続いたが、初代家康の将軍在位期間は2年間であった。その
理由としては、関ケ原で勝利したとはいえ、豊臣恩顧の大名が大勢いたため、徳川家で将軍を世襲
すると内外に宣言する意図があったと思われる。
・徳川家においても、承継が当初から順調だったわけではない。家康の長男は切腹、次男は豊臣秀吉
の養子になり、家督を継いだ三男の秀忠においても、関ケ原に遅参という大失態を冒していた。
・家康が秀忠に激怒して面会を拒否するなか、側近が取りなして立場を守るよう仕向けたり、重臣
からも推挙させるなど、戦略的に後継者を決めた。

▼徳川家康から学ぶべき事業承継の成功要因について
・後継者を早く決め、内外に周知を図った。承継後は、大御所として政務を執りながらも後見人に徹し、時間をかけながら権限を委譲した。
・戦国から安定の世へというビジョンを明確に打ち出し、先代と後継者が共有するとともに、多くの賛同が得られるように努めた。
・先代は後継者を指導し、後継者は先代を超えようとの考えは捨てる。先代が築いた理念を受け継ぎつつ、時代の変化に応じて精励するのが大事であり、先代を超えるかどうかは問題ではない。

~パネルディスカッション~
〇テーマ 地域で支える経営のバトンタッチ
〇登壇者
・菅 啓三[㈱公益社取締役会長/松前町商工会副会長]
・稲田 裕[㈱富士炭化興業・長浜町/県商工会青年部連合会会長]
・土居 美幸[土居アルミ・愛南町/県商工会女性部連合会副会長]
・前田 眞[愛媛大学社会連携推進機構教授]
・多田 稔[事業承継ネットワークコーディネーター/中小企業診断士]
〇要旨
▼事業の概要、事業承継の現状について
《菅》
月心グループを構成し、葬祭業のほかギフト関連事業等を営む。60歳を目途に後継者に譲りたいと考えてきて、昨年6月に社長を交代した。
《稲田》
父が始めたオガライト製造から業容を拡大してきた。、大学卒業後すぐに従事し、承継準備が進んでいない状況下で父が突然他界し、手探りで代替わりを行った。
《土居》
主人が営む建具小売業に従事しており、ハウジングメーカーの台頭や松下寿工場の撤退などから、受注量は低迷状態が続いている。息女2名は県外で違う仕事で働いており、承継の予定は全くない。
《前田》
愛媛大学者連携推進機構職員として、商店街の活性化など地域振興問題に関わる。事業承継支援を具体的に行ったことはないが、個店の廃業により、地域住民に不便が生じる事例はいくつも見てきた。

▼計画的な事業承継の取り組みについて
《多田》
事業承継等会員企業実態調査結果によると、事業承継を希望している事業者は52%、自分の代で廃業を予定している事業者は45%という結果が出ており、事業承継を希望している事業者の中では、子供など親族への承継を予定している事業者が約7割を占める。一方、43%の事業者が時期未定であり、計画的に承継を準備する難しさを物語っている。
《菅》
50歳で引き継いだ時から、60歳での社長退任を計画していた。承継前から、現社長(当時専務)とはコミュニケーションに一番留意した。
《稲田》
事業に従事し承継も意識していたが、計画的には進まなかった。事業を引き継ぐという強い覚悟が大事であり、経営者教育の一環としてセミナー等各種研修を受けていた。
《多田》
同調査では、45%の事業者が廃業を検討し、事業継続を希望する事業者でも18%は後継者がいないと答えている。
《土居》
技術を伴う仕事であり、承継を円滑に行うには同業種に携わる第3者承継が想定されるが、厳しい経営環境のなかでは、なかなか目途がたたない。主人も当代限りという気持ちが強い。
《多田》
同調査では、廃業を考えている事業者であっても、そのうち4割は業績が「普通」以上と感じており、今後も事業を継続していける可能性が高い。
《前田》
事業者都合で廃業もやむを得ないとするならば、その担ってきた機能を引き継ぐことが大事である。企業も地域資源のひとつであり、地域の活性化には、企業の存在なくして成り立たない。

▼地域で引き継ぐ経営資源について
《菅》
他地域の同業者が後継者難に直面した際、雇用をそのまま守り当社が承継したことがある。長年葬祭業に携わる経営者として、当社のみならず、業界として存続し続けるべきだと思っている。
《稲田》
仕入先での後継者難から、第3者承継を検討した時期もあった。企業が消えていくことは、地域にとっても忍び難いことであるが、具体的な承継になると双方のタイミングや気持ちの一致が欠かせない。
《土居》
建具業で時間的な余裕ができたことと独居老人への食事支援の必要性を感じ、惣菜の加工と配達を7年ぐらい前から始めた。3人グループで約70軒に届けており、この事業は将来的に息女とともに続けていきたい。
《前田》
企業が地域を支えるだけでなく、地域が企業を支えるという発想も大事である。移住者や地域おこし協力隊など、多様なライフスタイルの人達が経営に参画できればよい。
《土居》
事業引継ぎ支援センターについては、詳しく知らず意識も低かった。後継者難に悩む経営者にとってはありがたい。
《稲田》
事業承継セミナーなど研修会や公的施策の充実は良いことであり、後継者はぜひ参加してもらいたい。
《多田》
支援施策やセミナーの情報は各機関が個々に発信しており、まずは商工会の職員に尋ねるなど相談を持ち掛けていただきたい。

▼結び
《前田》
副業や職業者の高年齢化など働き方の多様化が進む中、事業者が担ってきた地域での価値を引き継ぐ動きとうまく融合できれば望ましい。
《土居》
事業が継続してきた背景には周りの支持があり、廃業ならば申し訳ない。建築関連業者の廃業も相次いでおり、地域のためにも前向きに考えたい。
《稲田》
青年部には多くの後継者が所属しており、事業所だけでなく地域も承継していくという気概が必要である。青年部活動の充実を図るとともに、多くの仲間に呼びかけていきたい。
《菅》
町内で懇意にしている社長達には、折に触れ承継の勧めはしている。今後は、商工会の会員増強を図りつつ、組織を挙げた取り組みに拡げたい。
《多田》
まずご自身の事業承継を考えられるとともに、周りの経営者にも啓蒙していただきたい。今回のイベントを一過性のもので終わらず、引き続き個社の支援に努めていきたい。

DATA愛媛県商工会連合会その他

代表者名
会長 村上友則
住所
〒790-0065 松山市宮西1丁目5番19号
電話
089-924-1103
ホームページ
https://ehime-sci.jp/
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