事業者インタビュービジネス・ア・ラ・カルト

女性理容師ならではの感性で、ビジネスチャンスを拡大 カットフロアーりゅう

<東温市>

「赤・白・緑」のデザインが印象的な理容店

 東温市南野田にある「カットフロア―りゅう」は、代表で理容師の細川津也(つや)さんが一人で切り盛りする地域密着型の理容店です。理容店のサインポールと言えば、「赤・白・青」が定番ですが、同店では「赤・白・緑」の三色が回転しており、店舗の外観もライトグリーンをベースにしたこの三色で構成されています。交通量の多い県道沿いに立地していることもあり、ライトアップされる夜間はかなり人目を引きます。以前の外観は濃紺ベースで、サインポールも定番の「赤・白・青」でしたが、令和6年(2024)の店舗リニューアルを機に変更されたとのこと。そこで店舗リニューアルの目的や内容などについてお聞きしました。

女性理容師の必要性を高校在学中に実感

 父親が理容師の細川さんは、高校在学中に理容の通信教育を履修し、京都の専門学校に進学。京都市内の理容店で5年半勤務した後、父親が経営する「理容わたなべ」で腕を磨きます。結婚を機に夫婦で独立開業し、平成9年(1997)に松山市内で「カットフロアーりゅう」をオープン。平成11年(1999)に「理容わたなべ」を受け継ぎ、2店舗目として営業を開始しました。平成16年(2004)に松山市内の店舗を引き払い、「理容わたなべ」を「カットフロアーりゅう」(現店舗)に改装し、現在に至ります。
 細川さんは、子どものころから実家の理容店で定期的に“顔剃り”(以下、シェービング)を経験し、その美肌効果を実感していました。しかし法律上、美容師はシェービングができず、理容師の約9割は男性が占める一方、女性の多くは「男性にはシェービングをされたくない」という現実があります。そこに“女性理容師”としてのビジネスチャンスを感じた細川さんは、美容師ではなく、あえて理容師の道に進みました。

女性客に配慮し、店舗リニューアルなどを実施

 「カットフロア―りゅう」では、以前からシェービングにマッサージと酵素パックをプラスし、美肌効果が期待できる「シェービングエステ」を提供していました。美肌効果の仕組みは、古くなった角質を除去することで毛穴が奇麗になり、肌の透明感がアップするうえ、化粧ノリも良くなるから。これは男性にも当てはまることで、「美肌効果を期待し、シェービングエステを希望される男性客が増えており、70代のお客様もいらっしゃいます」と、昨今のシェービング事情を教えてくれました。
 しかし「シェービングエステ」の名称では、女性客がオーダーしづらいことが分かり、店舗リニューアルを機に「レディースシェービング」の名称を採用。合わせて県道沿いの店舗壁面に大型看板(縦2m×横3.6m)を設置し、施術中の女性の顔写真と料金、要予約に加え、「女性スタッフが担当します」の文言を入れ、「レディースシェービング」をアピールしています。夜間でも見てもらえるよう、看板を照らす業務用LEDライトも取り付けました。さらに女性客が入りやすくなるよう、濃紺ベースだった外観を爽やかなライトグリーンに変更し、サインポールも「赤・白・緑」に取り替えました。これらに加え、クロスと天井の張り替え、換気扇及びエアコンの交換、屋外照明の増設も実施しました。

「マル経融資」と「まるごと応援補助金」をW活用

 店舗リニューアルの資金として細川さんが頼ったのは、商工会の推薦により、無担保・無保証人・低金利の有利な資金調達ができる「小規模事業者経営改善資金」(以下、マル経融資)で、運転資金を含め、総額550万円を借り入れ、すべての経費を支払いました。さらに後日、「東温市中小零細企業まるごと応援補助金」(以下、まるごと応援補助金)の50万円を受け取ることで、金銭的な自己負担を軽減しながら店舗リニューアルを実施しました。「マル経融資」や「まるごと応援補助金」を受けるには、各種書類の作成や煩雑な手続きが必要で、小規模事業者には大きな負担になりがちです。しかし細川さんは「商工会の指導員さんのサポートのおかげで、スムーズに申請できました」と当時の状況を振り返ります。

老若男女を問わず、新規顧客が増加中

 店舗リニューアルから約1年が経過しましたが、半年ほど前から「レディースシェービング」の新規女性客が増え始め、男性の常連客の中にも、カットのついでに施術される方が出てきたそうです。また“レディースシェービングだけ”の新規男性客も増加傾向とのこと。細川さんは「女性客が増えたのは、会員制のエステサロンよりも理容店の方が敷居が低く、“お試し利用”ができるから。また男性客が増えたのは、メンズエステやメンズメイクが当たり前になる中、新たに設置した看板を見て、“シェービングだけでもOKの理容店”という認識が広がったから」と、その要因を冷静に分析しています。
 現在、同店の顧客の男女比率は概ね7:3で、平均客単価は男性が約4,000円、女性が約5,000円ですが、細川さんは今後の目標として「レディースシェービングを入口に、女性客を増やすことで客単価を引き上げ、売上を増やしつつ、将来的にはレディースシェービングを発展させる形で、本格的なエステコースを始めたい」と意気込みます。最後に商工会に期待することをお聞きしました。「融資や補助金などの情報提供、新規事業の提案、連携可能な会員さんの紹介をお願いします!」とのご要望にお応えできるよう、全力でサポートを続けてまいります。

DATAカットフロアーりゅう

住所
東温市南野田253
電話
089-964-1160
創業
平成9年(1997)
事業内容
理容に関するサービス一式(カット・カラー・パーマ・シェービング)及びエステ
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